神山生活卒業3年目

生まれも育ちもコンクリートジャングル40代。夫と8歳娘と8年四国の山で過ごし、その後下山。

娘に「妹がほしい」と言われた日

ある日の夜、4歳3ヶ月の娘が布団に入るなり言った。
 
「あのね、妹がほしいの。お世話したいの。」
 
おうちごっこLOVEで、い嬉々としてお母さんになったり先生になったりする娘が「人間の赤ちゃんをお世話をしたい」と言うのは至極真っ当なことなのだろう。
 
しかし母親である私は、見えないところから腹部をグーパンチされたような衝撃を受けた。まさに不意打ち。
ちなみに夫とは「子供はひとり」ということで話がついている。
そして、自分の娘がそんな事を言うなんて思いもしなかった。
 
なぜか。その理由は大きく2つ。
 
【理由1】娘と同じく一人っ子で育った自分が「妹がほしい」なんて微塵も思ったことがなかった。
 
【理由2】「ごめん、妹は産んであげられない」と答えるのが予想以上につらく、加えて娘を説得できそうな理由を持ち合わせていなかった。
 
何から書こう。
 
まず【理由1】について。
私は子供が苦手だ。子供に限らず「自分より年齢が下の人」全般。
さすがに41歳にもなると出会う人の半分近くが「自分より年齢が下の人」になるので当てはまらなくなっているのだけど、幼少期は「赤ちゃん」や「友達の妹や弟」が苦手だったし、学生時代は「後輩」が苦手、社会人になってもそれは変わらなかった。
一人っ子あるあるなのだろうか。大人ばかりに囲まれて育ったために自分より幼い子供との付き合い方がわからない。自分がリードしていったり、何かを教えるとか、やり方がわからないしやりたくない。同時に、「年上ならばリードすべき、教えるべき」と思っていた(思っている)のから不必要に先輩風を吹かせてみたり、必要以上にプレッシャーを感じるのだろう。
「話の通じる大人」「かまってくれる大人」といるほうが当然楽で心地いい。
また、兄弟姉妹を持つ友人から聞く兄弟姉妹エピソードは「ムカつく」ことばかりで、羨ましいと思うことはなかった。 
 
続いて【理由2】について。
先述の通り、我が家では娘を一人っ子で育てるということになっている。
なにしろ子供が好きなわけではないので結婚してからも「絶対に子供が欲しい」という気持ちでもなく、また夫が出来た人で「産むのは女性だから女性が決めるべき」と言ってくれていた。なので子供について特に何も考えぬまま結婚して3年が経った。
しかし30代も後半に入った時、「産めるのであれば産んでみたい」という気持ちが湧いてきた。「望んでも産めない人がいるのに、産まない選択肢はないのでは」という気持ちもあった。そして運良く娘を産むことができた。
 
私にとって出産・育児は「自分にとっての経験」である。
 
「出産の痛みは忘れるから」という言葉を聞いたことがあるが、私はぜーーーったいに忘れない。娘は予定日ピッタリに2470gというちょうどいいサイズで産まれてくれて、これを安産と呼ばずに何というのだというほどに安産だったにもかーかーわーらーずーーーである。
出産そのもののしんどさに加え、産後数ヶ月のしんどさったら。
未だに鮮明に思い出せる、何もかもがアンコントローラブルな日々。
里帰り出産で両親にも助けられたし、夫は体調を崩すほど育児にリソースを割いてくれた。有り難く、恵まれた環境だった。
しかし、あれをもう一回となると誰に何と言われようと有り得ない。
また、「二人目の育児は一人目より楽」ということも聞くが、俄に信じられない。
3人の子供を育てる友人が「子供が増えても親のリソースは増えない。できることの量と質が下がるだけ。」と言っていた。そう冷静に語る友人が私には「プロ」に見えた。
きっと友人は数えきれないほどの修羅場をくぐり続け、超えても超えても立ちはだかる壁を乗り越え続けているはず。そこそこ精度の高い想像力を持ついい大人になった今だからこそ、自分がそんな修羅場や壁に耐性がないこともわかる。
 
子育てをしていると、これまでなんとか隠そうとしていた自分の弱さや性格の悪さがボロボロボロボロこぼれ出てくる。 
・「給食は美味しいもんね、おうちのごはんは美味しくないから食べられないよね」と最高におとなげない嫌味を言って娘を泣かせる自分が嫌
・娘がモノを投げても昨日は怒って今日は怒らない一貫性のない自分が嫌
・自分が片付け苦手なくせに娘には「片付けろ」と強気でキレる自分が嫌
 
自分が嫌、嫌嫌嫌嫌嫌イヤイヤイヤイヤーーーーーー
 
そんな嫌な自分と向き合うのが子育てなのもしれないが、もう十分。
これ以上嫌な自分は見たくない。
 
こんな話が娘に通じるはずもなく、娘相手でなくとも独りよがり過ぎる。
でも仕方がない、全部本当のこと。
 
娘には、
「赤ちゃんはすぐ赤ちゃんじゃなくなるんだよ?」
「妹が生まれるとは限らないよ?弟かもしれないよ?」
「もし赤ちゃんがうまれたら、○○ちゃん(娘)のこともっと怒っちゃうかもしれないよ?」
などというこれまた非常におとなげない言葉を並べてその場をやり過ごしたが、
「うちでは3人で仲良くやっていこうって決めたんだ」
と本当のことも言った。
 
そう、仲良くやっていこう。